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世良公則さんインタビュー2 Vol.2

世良公則さん フルアコースティックアルバム「JACARANDA」をリリースした世良公則さん。アルバム制作の舞台裏を語る第2弾! どうぞお楽しみください。

画像:満開のJACARANDAの街路樹と世良公則さん




満開のJACARANDAの街路樹と世良公則さん



アルバム「JACARANDA」について

■アルバムのセルフライナーノーツに、なぜこの「JACARANDA(ジャカランダ)」という木の名前をタイトルにしたかが書かれていますね。

それが始まりであり、すべてだからなんです。
このアルバム「JACARANDA/ジャカランダ」にはDVDがついていてそこでも触れているんだけど、ソロではアコースティックというスタイルをここずうっと続けていて、「Acoustic Works(アコースティックライブを収録したDVD作品)」ではエリック(・ゴーフェン)が参加してくれたでしょ。
それと、ダグ(・アルドリッチ)がホワイトスネイクで来日したとき(2006年5月)新潟までライブを聴きに行って、そこでいろいろ話をしたんだよね。そのときダグが、「何かやるときにはロスに来てくれよ。オレはいつでもおまえに協力するよ」と言ってくれたんです。
(編集部注:2003年9月にリリースされたアルバム「照-SHO-」はサブタイトルに「TWIST SONGS」とあるようにTwistをセルフカバーしたアルバムです。そのアルバムに、エリック、ダグが参加していたという経緯があるのです)

レーベルの方と新しいアルバムの話をしていたときに、「世良がアコースティックギター1本持ってロスに行って、エリックとダグがいればアルバム1枚作れます」ってことになったのね。エリックとはSOGAがメールをやり取りしているんだけど、「ジェームス・ブラントやクリスティーナ・アギレラなどのアルバムに弦とアレンジで参加しているし、そんなこんなで忙しいでしょう?」って聞いたら「何を言ってるんだ。世良がやると言うならぜひいっしょにやりたいし、アコースティックというならなおさらだよ」と返事をくれたんだよね。

それを受けてSOGAが「じゃあ作っちゃいましょう。メールでやり取りできているんだからきっと実現できますよ」と。エリックに「こういう条件で、この日程でできる?」と持ちかけたんだけど、彼はちょうどその時期自宅の近くにスタジオを購入したんだ。そこは映画音楽をやっている方が前のオーナーだったんだって。で、「アコースティックギターを録るなら、こういうウッディーなスタジオのほうがむしろ向いているよ」とが言ってくれたのね。それでエリックはOK。
お次はダグなんですが、「今、ホワイトスネイクのスケジュールがどうなるかわからないよ。でも、必ず何日かは空けるようにするから」ってことだったんです。でも、ハラハラするくらいスケジュールが出ない(笑)。
まあ、それでもとにかく行こうと決めたんです。「もしダグがつかまらなかったら、世良さん一人でギターを録りましょう。それとエリックのバイオリンがあればいいでしょう」とSOGAも言うしね(笑)。

画像:レコーディング中の世良さん




レコーディング中の世良さん



JACARANDA=ハカランダ?

極めて短期間で事を決めていったんだ。その3週間しか2007年に3人がレコーディングできる日がなかったんだから。準備にしてもエリックもダグもそれぞれアメリカ国内のツアー中だったから、その状況下でかなり慌しく頻繁に音源の圧縮データをやり取りして、寸暇を惜しんで意見交換。メールや電話で選曲に関して話し合いをしたんだよね。正直ハードな日々だった。GUILD9のレコーディングの翌日からだからね。
そしてあっという間に出発の日。気がついたらロス行きの飛行機に乗ってた(笑)。でもLAX(ロサンゼルス国際空港)に降りた途端、あの慌しさが嘘のように消えて心身ともにリラックスできたんだよね。不思議だよね。

ロスに到着した日にクルマで移動していたら、街路樹や生垣に紫のこの花が一面に咲いているんですよ。僕とSOGAは「桜みたいだね」って話していたんだよね、とエリックに言うと、

エリック:そうだね。日本人にとっての春を知らせる桜みたいに、この花は僕らにとって夏の始まりを知らせてくれる花なんだよ。これが散ると夏が来るというね。

世良:そうなんだ。で、名前はなんて言うの?

エリック:ジャカランダだよ。

世良:ジャカランダ。つづりは?

エリック:J、A、C、A、R、A、N、D、A

世良:えっ!? それってハカランダのことでしょ!

エリック:いや、知らないなー。

世良:それって、ビンテージや高級ギターの材として使われているハカランダのことだよ。

って言ったんだけどエリックは知らないの。で、ダグがやってきてくれたときにも聞いたんだけど彼も知らない......。仕方がないのでインターネットで調べたら、ジャカランダはブラジリアン・ローズウッドで高級ギターに使われている材「ハカランダ」だと出てきたの。

画像:左、エリック・ゴーフェンさん




左、エリック・ゴーフェンさん



ロスで書いた新曲も「JACARANDA」

「ほらほらほらーー!」って教えたら「それはすごい情報だねー」ということになったのね。で、ダグも引っ越したばかりで、その家の敷地に大きなジャカランダが2本あったのだけど、庭を造るために伐採したんだって(笑)。

(一同笑)

ダグに言ったの。「それギブソンあたりに持ち込んで、『十分乾燥したらこれで僕のギターを作ってください』って特注できたのにね」って。「しまったーー!」って(笑)。でもね、

ダグ:まだ家には80センチくらいの木が1本あるからさ......。

世良:ギターを作れるほどにそれが成長するまでに何百年かかるかなー(笑)。

って。
それで、僕ら日本人にとっての桜に相当する木で、街路樹としても彼らの生活に溶け込んでいるのがこのジャカランダであること、僕らが使っているギターを作る材ハカランダ(=ジャカランダ)であることで何か因縁めいたものを感じて、写真を撮っていたのね。

そしたらある日、エンジニアのイエンさんが「ジャカランダは年に2度咲くんだよ。最初は夏の前の5?6月に咲いて、次は10月にもう一度咲くんだ」って言うんだよね。
このアルバムのレコーディングにロスを訪れたのが最初にジャカランダが咲いていた時期。このアルバムのリリースが9月26日だから、「リリースされたよ」という便りがロスに届くのが次にジャカランダの咲いている季節。
レコーディングにエリックのお父さんが使っていたというエリックがすごく大事にしているマーティンのギターがあったんだけど、それにはもちろんハカランダの材が使われていたし。 「ジャカランダを見たら世良を思い出すよ」と彼らも言ってくれて、さっきの話と合わせて考えると「これはもう(タイトルは)ジャカランダしかないね」と。

新曲を2曲入れることも決めていたんだよね。ただ、SOGAからは「新曲はロスで書いてください。エリックやダグと演奏しているうちにインスパイアされたことから書いてください」と言われていたので、1曲は僕らの友情の曲として『ジャカランダ』を書いたんです。英訳したときに彼らにもストレートに伝わるようなシンプルな歌詞の曲です。

■なるほど。そんなストーリーがあったんですね。

そうなんです。以前TWIST INTERNATIONALで「照-SHO-」というアルバムをロスに作りに行ってそこでいろんなプレーヤーたちとセッションをさせてもらってね。そのプレーヤーたちがほかの日本のアーティストたちと仕事をしているときに、「今世良ってやつと仕事しているんだけど」って話すと、みんなが「あ、世良さんとやってるんですかー」って言うんだって。で、そのプレーヤーたちがランチで話をしていたら「オレがいっしょにやっているやつは世良のこと知っていたぞ」「あ、オレんところもそうだぜ」「世良って日本じゃ有名なやつらしいな」って会話になったんだって(笑)。
そこからエリックと親しくなって、ちょっとの間トラブルがあったんだけど、スタッフのみんなが一丸となって乗り越えて、エリックとの信頼関係も保ってくれてね。エリックがバイオリン片手にライブにやってきてくれたり、いろんなことがあってね。

今回も12弦ギターを録るときにダグの持っている12弦の調整がうまくいかなかったことがあったのね。そのときはジェームス・ブラントやクリスティーナ・アギレラのプロデュースをしているリンダ・ペリーさんに「世良が困っているから12弦ギター貸して!」って頼んで借りてきてくれたんですよ。「えー!? あのリンダ・ペリーのギターなの!?」って傷つけちゃまずいって言いながら弾かせてもらったり(笑)。
そのお互いのフレンドシップがフレンドシップを呼び合うようなことがあったりね。曲のなかにもちょっとリズム隊の入っているものがあるんだけど、それはエリックが友人のパーカッショニストに電話して、「カホンを入れたいんだけど」って言ってくれたのね。そしたらドン・ヘンリーのバンドのベーシストの「ジェニファーさんがいっしょにいるんだけど、彼女も連れて行くよって言ってくれているのでベースを入れない?」と。
そこにさらにスライドギターの名手グレッグ・レイズさんが参加してくれて、ちょっとしたバンドセッションになったんだよね(笑)。そのときにアルバムタイトルの話題になって、「ジャカランダっていうのか、それは思いつかなかったね。ロスの花だしね」「きれいないいタイトルだね」ってみんな言ってくれたんですよ。

■すばらしいですね。

画像:作曲中の世良さん




作曲中の世良さん



イージーではない、楽さ

うん。GUILD9のときもそうだったんだけど、そこにはまることで全部がすっと見えてくる。そういうこともあるんだよね、たまにはね。タイトルやテーマをすっごく考えて、そこに合わせていくという方法もあるけど。10作に1作くらい、こういうことがあるんだよね。こうやってわいてくるような、にじみ出てくるような、そういう瞬間に「ありがとう」と素直に言えるようなね。
それはどう評されても僕には全然関係ないの。普段は「わかってないなー」みたいなこともあるんだけど、今回のようなケースでは「いかようにもどうぞ」と思えるんです。ただ、それを伝えないと意味がないからね。
アマチュアが自分たちで作ったものを自画自賛して、「子どもができたら聴かせるんだ」っていうのはそれはそれでいいけどね。僕らの作品というのは200万枚売れているアルバムと同じところに並ぶわけだから、それは僕の責任として一人でも多くの人に聴いてもらうために何ができるかということなんだよね。一人でも多くの人に届いて「いいじゃん」「よかったよ」と思っていただけることに胸を張って「今回はいいものができたって言えるんだ。ありがとう」って言えればなあって思う。そして、それをいっしょに作ってくれたエリックやダグたちに友情を込めて感謝できるんですね。

そういう作ったみたいな話を、30年「ロック!」ってやってきた僕が体験できるのだから音楽ってすごいと思うのね。それこそ、前回の「ギターラボ」で「目からうろこが落ちたようにアコースティックでがんばらせてもらっているんですよ」というところから、今回のように「こんなになっちゃいました」みたいなね。わき水がにじんで、こんなに色の違う(「WE ARE GUILD9」と「JACARANDA」を指して)2枚が同時期にできちゃったっていうね(笑)。

■僕は世良さんが30年間取り組んできた姿勢が周りを動かしたっていうのも、すごく大きいと思うんです。さきほど(Vol.1で)イージーにやらないっておっしゃったじゃないですか、それって僕らも一番気をつけている部分なんです。「これって軽くできるじゃん」と思って流しちゃったときに、後から「ああー......」って。

取り返しがつかないからね。

■そうなんです。それは絶対にやっちゃいけない。世良さんは30年間音楽をやり続けてきて、その間のさまざまなことが血となり、肉となって「世良公則」という存在ができあがってきていて、それにつられて周囲も育って、それに共感していっしょにやりたいと思っている人が結集しているんだと思うんです。

特に今がそうだよね。だから、ひょっとしたらアコースティックに目覚める前の僕のままだったら、「30周年? うーん、ガツンっといってよ」となったかもしれないし、イージーにやるとは思わないけど性格的に、でも違った形態で違った花火の上げ方を考えたかもしれないよね。
あの事件以来(詳細は2006年のインタビュー Vol.7をご覧ください)、今やっている人たちとはいいと思うからやってこられてると思うんです。売れてるからとか、ギャラがいいからとかそういうことがモチベーションではないんですよ。そうじゃなくて「いいねこれ、誰だっけ?」「ええ? 世良? 世良ってこんなんだったっけ?」「でもいいね」って言ってくれることがありがたくてね。「そりゃあ、だって努力はしていますから」って(笑)、「準備したから」ってね。その準備っていったってあからさまに何か大きな力に頼ったプロモーションをする、ってことではなくね。
最終的に歌う人がいて、各楽器のプレーヤーがいて、それを録る人がいて、聴いてそれを書いてくれる人がいて。それが「世良」というアーティストの集合体だから、そこの世良公則は一部なんだよね。作って歌ってという役割。そこがイージーにやっちゃうと全部に感染していくからやっぱりそこは大事だよね。でも、楽になることは大事だよね。「あとみんな任せたー。エリック頼むー」というような楽はね。

ロスでね、料理を自分で作ったんですよ。ピーマンとかきのこを買ってきて、きのこは頭の回転がよくなるからってたくさん入れてね(笑)。その延長でアルバムを作った感じの「楽さ」ですよね。

画像:準備中の世良さん




準備中の世良さん



イージーではない、楽さ

「JACARANDA」って曲なんだけど、最初は僕が歌いやすいキーで作ったんです。そしたら、

エリック:世良、もう少しキーを下げてくれないか

世良:え、なんで?

エリック:しゃべっているような声で歌って。こんなことがあって、こんな友だちがいてね、ジャカランダの花が咲いていてね、今度咲くときにまた合いに来るよ、でもそのときは僕じゃなくてCDが届くってことなんだけどね、と笑って言っている世良がそこにいる感じ

と。だからこれは僕にとっては歌声じゃない。
話しているキーってたぶん3?4度くらい下がっているキーなんだよね。「カッコよく歌わず、話しているそのキーで歌ってください」と。まあ、エリックはサウンドプロデューサーだからね。サウンドプロデューサーの言うことはきちんと「はい!」って聞いて試みるんだよね。ギターはカポをつけて高いところを弾いているけど、歌はすごく低いというね。それはそれでひとつのチャレンジなんだよね。それがいいか悪いかは聴く人に任せようと。

■なるほどー。そういう発想を持っているっていうのは、やはりすごいですね。ミュージシャンでありサウンドプロデューサーであるって。

そうだね。僕としゃべっているそのキーで歌ってください、なんてね。そういう歌だからと。それがシングルで「これチャートの20位に入らなかったらオレ契約きられちゃうぜ」っていう状況なら彼も考えると思うのね。でもそうじゃない。アルバムのなかで一番コンセプトのある曲なんだから、それならそのコンセプトだけを貫きましょうと。「そういうアルバムですよね」と、エリックがサウンドプロデューサーとしてそう考えるのなら僕は何も言わず「オッケー」と。




「JACARANDA / TWIST INTERNATIONAL」ジャケット 「JACARANDA / TWIST INTERNATIONAL」
世良公則(vo.g)
ダグ・アルドリッチ(g)
エリック・ゴーフェン(vio、サウンドプロデューサー)
【収録曲目】
1.あんたのバラード 2.性-さが- 3.Days-デイズ-
4.Soppo 5.そっと・・・kissを、 6.宿無し
7.Against The Wind 8.歩み(そして・・・明日)
9.銃爪 10.燃えろいい女 11.バラードが聴こえる
12.Jacaranda-ジャカランダ-




アルバムタイトルに込めた思いが伝わってきましたね。DVDでもその辺を語ってくれています。続きもどうぞお楽しみに!



●文:Yahoo!オークション
●写真提供、協力:Mr.SERA PROJECT






世良公則さんオフィシャルサイト



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