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増崎孝司さんインタビュー Vol.3

増崎孝司さん「DIMENSION」の増崎孝司さんの音楽観、楽器へのこだわり方、新作「『20』-NEWISH-」について語っていただいきました。その第3弾、最終回です!

画像:ロジャー・サドウスキー作の愛機「ジャズキャスター」




ロジャー・サドウスキー作の愛機「ジャズキャスター」と増崎孝司さん



ICEこれが売れちゃダメだと思う

僕はこのアルバム(「『20』-NEWISH-)が当たったら、ダメなような気がします。もっとやりたいことがあるので、これが売れちゃうとなかなか次が出せないとか、次も同じようなものを作ってしまうとか、それは絶対にやりたくないんですよ。もちろんたくさんの人に聴いてほしいとは思いますよ。でも、誰でも知ってるような人、バンドにはこれではなりたくないですよね。もうちょっと上に行ってからがいいですね。これは本音です。カッコつけて言っているわけではなくて、これでやっと(何か)つかんだ気がするんですよ。「あ、この感じでいいんだ」っていうものをね。
ニューヨークでレコーディングしたと言いましたけど、形はそうだけど中身は向こうからこっちへ歩みよってくれたというか。自分もオープンマインドでいなくてはいけないんですが、「こうしたいな」って言うと「お、やろうよ」っていう反応がくる。道筋がちゃんとできた感じがするんですよね。売れちゃうと違う力が作用してくるので、それはまだいらないな、って思うんです。「まだそっとしておいて」という感じでしょうか(笑)。

■ほかのベテランアーティストもおっしゃっていましたが、「クオリティーを落としたくない」という思いはみなさん共通にお持ちなんですね。

そうですね。アーティスト側が、「こういうものを作りたいんだ」という意志をしっかり持っていないと、別の力が加わるということがあるんです。15周年だってたまたま年月が重なってできた結果でしかないし、さすがに25周年、四半世紀ともなるとあちこちガタがき始めていて、それなりの感慨はあるんでしょうけどね。

インストゥルメンタルミュージックに対する理解って、一番身近なレコード会社の人のなかにも「どうしてそんな見方をするのかな?」っていうのがありましたよ。「どうしてカテゴライズしようとするのかな?」とか。前作「My Rule」を作ったときには「もっとアグレッシブなイメージで見てほしい」という意識があったんですね。どういうことかというと、ギター、サックス、キーボードというリズム隊を持たないウワモノ3人組がジャズという概念から自らを解き放つには、人の手を借りて生のリズムを入れるのではなく、自分たちで打ち込みで作るということが必須だと考えたんですね。で、どんなリズム隊の上に僕らウワモノが乗っても「DIMENSIONサウンドなんだよ」ということを僕らの一番身近な人に伝えたいという思いで。さらに、自分たちが自分たちの限界を意識する、これ以上のことはできないんだということを認識するための「My Rule」だったんですよ。
それまでは誰かが「ここの上に自由に描いてよ」といって白いキャンバスを渡してくれたんです。でも、そうしないで自分たちでそのキャンバスを用意し、「これがDIMENSIONだ」とメンバー全員が理解し、それを自らの枠と設定したのが「My Rule」の意義なんです。それなりの評価をしていただき、とてもありがたいことだと感謝しましたが、今度はその枠を取りはずさなければということで作られたのがアルバム「『20』-NEWISH-」なんです。

だから最初の数曲はいわゆる「DIMENSIONらしい」とリスナーが思うようなものなんですが、後半に行くにつれて「あれ?」っという感じになっている。変えているんですよ。

■そのとおりなんですよ。途中から「あれ? どこへいくんだ?」という。

でしょう(笑)。音楽を好きな人なら分かるんですよ。最初のうちは「変わんないじゃん」と思っている、でも「そうでしょ? でもそのまま最後まで聴いてみてよ」って感じなんですね。途中で「おや?」っと思ってもらって、最後のセルフカバー「Jazz Cigarette(15th Anniversary version)」で「僕らはここから始めます」と宣言しているんです。

■なるほど、そういう意図があったんですね。

画像:ロジャー・サドウスキー作の愛機「ジャズキャスター」と増崎さん




ロジャー・サドウスキー作の愛機「ジャズキャスター」と増崎さん



新しい「DIMENSION」

ニューヨークに行って、サポートしてくれたミュージシャンに「おまえはホンモノだ」って言われたんですよ。「その意味は、誰のマネもしていないということだよ」ってね。それはすごくうれしかったですね。
その彼が別の演奏で来日したときに会いに行ったんですが、いっしょに来ていたベーシストに「こいつはほかの日本人とは違うんだ」って言ってるんですよ。「照れくさいからもういいよ」って言ったんですけどね(笑)。でもその後、スイートベイジル(東京・港区六本木)でいっしょに演奏をしたときに「そのとおりだ」って言われて、それは自分にとってすごく励みにも自信にもなりましたね。
自分がみずからの扉を開いて、同じ目線でやることが大事なんですよ。まかり間違って売れてしまうと、その目線がどうしても上からになってしまう。それもイヤなんですね。

いい加減この年齢になると、教えるという立場に置かれることが多くなって「後輩の指導を頼むよ」って言われることも多いんですが、「いや、まだまだおれが成長しなくちゃいけないからダメだよ」って言っているんですけどね。やっぱり現役でいたいんですよね。そういう感覚でいるうちは育てるというところには行けない気がします。まだまだDIMENSIONという名前と、TAKASHI MASUZAKIという名前の両方で活動していきたいという思いでいますからね。

話がそれちゃいましたが、「My Rule」で作り上げた枠を「『20』-NEWISH-」で壊す、そういう作品ができたことはこの後のためにも非常によかったなと思います。

■増崎さんのおっしゃったことを復唱するみたいでなんですが、僕は4曲目までは「DIMENSIONはそうそう、このサウンドだよ」と思って聴いていたんですが、5曲目から「あれ? DIMENSION?」と。「なるほど、これがアルバムタイトルが語るところのNEWISHなんだ。これが新しいDIMENSIONなんだ」と、そう言っているのがひしひしと伝わってきました。

そうでしょう。最初のほうの曲を「これだよ、DIMENSION」って言ってもらえることは、いい意味でもとらえますし、悪い意味でもとらえますね。それは「やっぱりこれなんだ」ともとれるからなんです。あるライターさんが「Returns」という曲を聴いて「これが新しいDIMENSIONだって思っていいんだよね?」「聴けば聴くほど、いろいろな違った色彩が見えてくるんだ」って言ってくれて、「そのとおりだよ」と。これがリスナーのみなさんにわかってもらえて伝わるといいなぁって思いますね。

■伝わりますよ! 僕なんかこう言っちゃ失礼ですが、アルバム数枚しか持っていませんし、近作も送っていただいたものを聴いたくらいの知識しかありませんが、それでも刷り込まれていたイメージってのがあって、それを払拭するのに十分な作品だと思ったんですから。ファンの方にもちゃんと伝わると思います。

画像:レスポールと増崎さん




レスポールと増崎さん



ICEスタジオミュージシャンにあこがれて

この変化に何を感じました(笑)?

■すでにずいぶんお話しを聞いてしまったのでなんですが(笑)。増崎さんの決意めいたものを感じました。変わらなきゃっていう。

そうなんです。僕が変わったんですよ。僕が変わりました。バンドをまとめていくことは「みんながよければそうしようか」ということだと思っていたんです。でも、それは違うんだなって気づいたんですよ、ある日。だからって「ああしろ、こうしろ」というやり方じゃなくね。「そういうふうにしたい? でもオレはこのほうがいいと思うんだよね」とか。「この方がカッコいいでしょ?」「いやカッコはどうでもよくて、どうしたいかでしょ」と。カッコつけて書いた「つ」という文字より、さりげなく書いた「つ」のほうが「見たことないけど、こんなフォントあったらいいよね」みたいなことのほうが好きなんですよ(笑)。
カッコつけたものっていずれメッキがはがれちゃうでしょ。だからそういうことはちゃんとメンバーに言おうと決めたんです。

逆にいいものはいいと言おうってこともね。「それ弾き過ぎだよ、もっと弾かなくていい」って、そのときは「そうかなー」って思うんだけど、後からやってみるとそれが「やっぱり弾かないほうがいいね」ってなっていたり。それからお互いがお互いをちゃんと意識しあえるようになったんですね。

うまいへたという次元を超えちゃうんだよね。自分が今までいいと思っていたことが、ガタガタと音を立てて崩れていくことを経験したりしながら音楽性が固まってきた気がしますね。タイミングも含めてタイムリーだったな、という気がしました。

■今のお話しを聴いて納得です。DIMENSIONの音ってわりとかたまり感というか、密度がすごく濃いですよね。それが「間」の美学に変わったなと。

そうですね。最初は歳取ったからなのかなぁって思ったんですよ。でも、いやそうじゃない。語りかけないといけないんだって思ったんですよね。「歌心」っていう言葉がありますよね? 歌っている人に「歌心ありますねー」なんて言わないでしょ。僕は僕らの音楽は歌えないなって、ずっと思っていたんです。それがストレスでもあった。難しすぎるのね。ここできっとさっき話した歌ものが好きだったということにつながるんだと思うんだけど、「もっと歌いたい」って思うようになったのね。

みんなが歌ってくれるようなものをやりたいってね。「Out Off This Sky」をライブで演奏しているときにドラムのライオネル(・コーデュー)が歌いながら演奏しているのね。で、「これだ!」と(笑)。こういうのがインストでは大事なんだと思いましたね。

実は「My Rule」を作ってすでにおなかいっぱいって状況だったんですね。「え!? 次作るの?」って。次はニューヨークで録ろうよ、って言ってくれるしね。「うーん、どうしよう」と。でもね、人生なんて80%くらい悲しいことで、楽しいことなんて20%くらいしかないじゃないですか。毎日「イエーイ!」なんて言ってる人はいないわけで。どんな人でもね。そんななかですごくラッキーだったことは曲が書けたことなんですよ。
ほかのメンバーは行ったことあるんですが、僕はニューヨークは行ったことなかったんですね。ロスは行ったけど。ロスは短パンにTシャツで「イエーッ!」って感じでしょ? ニューヨークはコートの襟立てて、携帯で「ハロー」みたいなイメージしかないわけ(笑)。そうやってイマジネーションがいろいろできたんですよ。壁のペイント、背の高いビル......、そうやっているうちに曲が書けたんですよね。で、ニューヨークに行けることになったんですが、「デトロイト経由です」「......(がく)」みたいな。

(一同笑)

スタジオについても「どこ?」って感じだし。ロスとは全然違うのね。東京と変わんないんだよね。狭いし。違いはプレーヤーですけどね。僕はニューヨークはあんまり好きじゃないですね。都会が好きじゃない。マンハッタンは好きじゃない。ブルックリンはいいですね。マンハッタン島に戻るときに、仕事に行く感じがしていいなとは思いましたね。都内でも港区には住みたくない。オンとオフを分けたいですよね。だからこのアルバムもオンとオフ、両方で楽しんでもらえたらいいなと思います。




「DIMENSION / 『20』-NEWISH-ジャケット写真」



DIMENSION / 『20』-NEWISH-

15周年にして20枚目のを迎えた今作は、初のニューヨークレコーディングによるワールドワイド感溢れ、これまでの活動を総括するまさに金字塔アルバムです!!

【収録曲】
DISC-1
01: NEWISH
02:Black Code
03:Cut To The Cool
04:Things Never Change
05:I Will
06:Returns
07:Out Off This Sky
08:Far From Here
09:Life
10:Be My Wind
11:Jazz Cigarette(15th Anniversary version)




※編集部注:アルバム「『20』-NEWISH-」は雑誌ADLIB AWARDS 2007、国内JAZZ/FUSION賞を受賞しました。まさに増崎さんの狙いどおりというか、そこを評価されたといっても過言ではないでしょう。おめでとうございます!



●協力、写真提供:ZAIN ARTISTS/ZET
●写真、文:Yahoo!オークション






DIMENSIONオフィシャルサイト



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