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増崎孝司さんインタビュー Vol.1

ICE結成15周年を迎えたトップ・フュージョンバンドのひとつ「DIMENSION」の増崎孝司さんがギターラボに初登場! 増崎さんの音楽観、楽器へのこだわり方、新作「『20』?NEWISH?」について語っていただいきました。その第1弾です!

画像:「DIMENSION」左から小野塚晃さん、増崎孝司さん、勝田一樹さん




「DIMENSION」左から小野塚晃さん、増崎孝司さん、勝田一樹さん



ICE田川君みたいな人が評価されなきゃ

安藤まさひろさんからのご紹介でうかがいましたが、以前、田川伸治さん(DEEN)が増崎さんのことを大変敬愛されていて、インタビューでもいろいろお話してくれことがあったんです。

田川君とはもう1年半くらい会っていないんです。Motion Blue(YOKOHAMA)以来会っていないから。田川君はね、見ている僕が元気になるギタリストなんですよ。ここまで自分の生活をギターにフォーカスして生きていけるんだと、うらやましくなるんです。
僕ももちろん(ギターは)大好きだし、自分の身近にあるということはすごく幸せだなーとは思います。先日ロジャー・サドウスキー(ギター製作者)が来日したとき「オレが作ったギターはどうしてる?」って聞くんですね。「君が作ってくれたギターが僕のそばにあることって、とても幸せなことだよ」って答えたら「じゃあ、もう1本作ってあげるよ」って。
(満面の笑みで、口元を隠すそぶりで)「やったー」って(笑)。僕の場合はそういう感じのフォーカスなんですよ。でも、田川君の場合は「うれしいー!」っていうのが全身から出るタイプの人なんですね。ああいう人が日本の音楽にはもっと必要なんじゃないかなって思うんですよ。プロっぽ過ぎてもつまらないし。

今、アーティストやミュージシャンが少なくなったのは、単純に音楽がつまらなくなってきたからなんじゃないかと思うんですよ。でも、業界の人間は「若い人は携帯電話にお金をかけているから」とかいろいろ言い訳するけど、クオリティーさえ高ければ絶対そういうことをはねのけても来てくれるはずだよね。
なんでみんなそういう逃げ口上ばかり言うんだろうなーと思っていましたけども......。もうこういう時代にストンっと落ちて、僕はもう「落ちた」という表現しかしたくないけど、今度は「大人が聴く音楽はジャズだ」とか言い出す......。もう「ふざけんなよ」って感じなんですよ。
ジャズは大人が聴く音楽じゃなくてもともとはダンスミュージックのはずなのに、なんか「ラウンジ」っぽくしちゃって。日本人にはもちろんいいところもたくさんありますが、悪いところはそういう固定観念をつけてしまうところ。
だからミュージシャン側も「ジャズはこうでなきゃいけない」「ロックはこうでなきゃいけない」ってカテゴリにはめたがるんですね。その結果、音楽がつまらなくなったんじゃないかなって思いながら田川君とステージをやると、こういう人がもっともっとスポットを浴びてちゃんとした評価をされれば、音楽ももっと変われるんじゃないかと思うんですよね。

そういうミュージシャン、いっぱいいると思います。もっと別の側面から見てあげると違うのになーと思うんですね。どうしても枠にはめたがる。そういう時代は2008年くらいで終わりにしないといけないって感じます。




楽器(ギター)は1本1本全部違います

■なるほど、そうかもしれませんね。

若い人の前でギターを弾くと、「どうしてそんなふうに弾けるんですか?」って聞く人もいるけど、「いや、オレには無理無理」って言う人がすごく多いのね、「無理無理」って。無理って言ってしまったらそこから先には絶対進まないし、それを「チクショー! オレも絶対そういうふうに弾いてみせるぞ」って思わせなきゃダメなんだと思うんです。
昔、僕もジェフ・ベックスティーヴ・ルカサーを「うわー、すっげえなー!」って見ていたし、イングヴェイ(・マルムスティーン)なんかが出てきたときも「わー、こんなことやるやつがいるんだー......」みたいな見方をしてたんですよ。そういう好奇の目でもいいから、見ればきっと違うんでしょうね。
「ふーん、いいんじゃない」って。本当は「うらやましい」って思っているくせにちょっとすかした言い方をするのがはやっているでしょ。それじゃつまらないですよ。こんなにいろんな楽器(ギター)がいろんなメーカーから出ているのに、そういうスタンスで向き合うのはつまらないですよね。

そりゃあプロにだってありますよ、「無理無理」って。でもね、ふと考えるんです。「こいつにできて僕にできない? こいつは指だって5本だし......。今はたしかに無理だけど、いつかはやれるようになってやる」って気持ちはあるわけでしょ。若い人たちはそれさえ持っていない人が多いんですもの。それがすごく残念なんですよ。

それと、日本人はすぐに感染して人のマネをしてしまう。だから売りやすいのかもしれないんですけど、みんなが(ルイ・)ヴィトンのバッグを持ってるんですよ。僕なら「あ、同じだ」と思ったら隠したいもん(笑)。

(一同笑)

自分しか持っていないからかわいいのであって、「これ、オレしか持ってないんだよね(ニヤリ)」っていうのが所有欲の最たるものじゃないですか。だから、そこから一歩突き進んだ考え方になればいいのになーって思うんですよね。昔は人と違う格好をするのがイケてたんですけどね。同じだと安心するんでしょうかねー。

僕は楽器ではその個性を出したいなと思っているんですよ。
昔、亡くなった青木智仁さんに「増やんって同じ種類のギターを持っていないよね」って言われたんですよ。僕は最初その言葉の真意がわからなかったんです。「ええ!? なんで同じものを2本持つ必要があるんですか?」と、シンプルに思ったんですよ。そしたらその真意は「メインとなる楽器が不調なときはサブのものがメインに成り代わらなきゃいけない」ということだったんですね。「ああ、僕はそんな感覚で楽器を持ったことがないな」と。
僕は1本ずつ違うからいい、という感覚なんですね。人によってはそういう感覚もあるんだなと、そのとき初めて思いましたね。プロと名乗るからにはそういうことも大切なんでしょうけど、僕は1本1本違うっていうのもいいかなって。同じもの持つっていうのは、性格的にも無理かなって思うし。どれがどれだかわからなくなりそうだしね(笑)。
1本ずつ違うからかわいいなって思えるし。(スタンドに並んだ4本のギターを見ながら)全部違いますものね。ネックの握りも違うし、同じものは弦の太さくらいですね。セットアップも、ピックアップも違うしね。
「メインのものがダメになったらどうするの?」って聞かれたことがあるんですけど、「じゃあ、どれがメインだと思う? 全部メインだから大丈夫だよ」って答えたんですけどね。今考えると、もしこれがダメになったら代わりになるものはないんですよね。




ICEイマジネーションできない未来は絶対にこない

■たしかにそうですね。若い人の話が出たついでなんですが、今の若い人はお金を使うことをあまりせず、貯蓄するのが趣味みたいな報道がありましたが......。

は!? 貯蓄ですか? うらやましいなー。で、その目的は?

■将来のことが不安だからだそうです。

ああ、耳が痛いなあ(笑)。
僕はルーズにお金を使うというわけではありませんが、必要とあらば使います。そのときのパッションはそのときに使わないと意味がないと思うからなんですけどね。
僕のPC(パソコン)が今年クラッシュしたときに、僕にとってそれはとっても大切なツールなのでもう1秒も待てない。速攻で買いに行きました。でも、買わないで1か月がまんして、そーっと生きていこうすると、そのそーっと生きる1か月というのは僕にとって空白の時間になってしまうんです。
貯蓄をする若い人をどうこう言う気はまったくありません。僕は今が充実していないと、音楽面でも趣味でも、会社生活でもなんでもいいんですけど、未来を想像できないじゃないですか。やっぱり音楽でも恋愛でもなんでもそうですが、僕は想像力がすべてだと思うんです。
イマジネーションできない未来は絶対にこないと思います。
音楽を聴いたり、服を着たり、ものを食べたりしてイマジネーションする。たとえば彼女と洋服を見に行ったとします。自分じゃ絶対に買わない種類の洋服を、彼女が「これいいじゃん」ってすすめたとします。それを「ええ? そうかな」と言って着てみて、「あ、いいかも」と思った瞬間からその人の思い描いていた人生と違う人生が開けるんですよね。僕はそれが楽しいと思うんですよ。




レスポールをうれしそうに弾く増崎さん



楽器が呼んでいるんです

楽器との出合いもそうです。
僕はTUBEの春畑(道哉)さんと、昔いっしょに楽器店に行って片っ端からガンガン弾くタイプだったんですよ。今でもそうなんですけどね(笑)。
クルマを運転していて「あ、楽器店に行こう」って思ったときには、僕は「呼ばれてるな」って思うことにしているんですよ。このレスポールがそうでした。
このときはたまたま弦を買いに行ったんですよ、イケベのギターズステーションに弦をたった2セット買いにね。で、「ああ、オレ呼ばれてるなあ」って思ったんですよ。「完全に呼ばれるわ」と。スケジュールもポッカリ4時間空いていたんですよ。予備の弦はあったんですけどね。で、行ったらサドウスキーの弦が2セットしかストックがない。「あ、買っておこう。ついでにアコギの弦もないから残りのお金でそれも買おう」と思って店内を見ていたら、こいつ(レスポール)がさがっていたんですよ。「ああ......、(呼んだのは)あいつなんだ」。

(一同笑)

(笑)自分のなかで、なんだか知らないけどレスポールって来ていたんですよ。それまでも何度かレスポールを所有していて、買っちゃ売り、買っちゃ売りを繰り返していたんですね。
今これ以外にレスポール・スペシャルを持っているんですが、それは61年のリフィニッシュのストラト(キャスター)を買ったときに、上のフロアに行ったときにいたやつなんですよ(笑)。リイシューだったんですが、8万円という中古でね。で、いつも僕の担当をしてくれるイケベの人に「それ弾かせて」って言ったら、「出た!」って言うんで(笑)、「うん、いいと思うんだよね」って言って弾いたら、その人もそれは聴いたことがなかったようで「ええー、いい音するじゃん」って。「でしょうー。これも買う」って。

(一同笑)

そういう感じなんですよ、僕はいつも。
今持っている(ES)335も(イケベの)ネットで見つけたんですよ。それ以前の64年の335はそのイケベの人から買ったんですけど、僕が思い描いているものよりロックっぽかったんですよ。すごくパワフルでカリカリしていたんですね。いわゆる64年のブルースブレイカーズのクラプトンの音がするんですよ。でも、僕がほしいのはそういう音の335じゃなくて。でもリーズナブルなプライスだったし「いいなあ」と思って買ったんですけどね。
で、ネットの335を買い物カゴに入れてメッセージを「増崎です。キープしといて。あさって行きます」って(笑)。で、行ったら「そういう予約の仕方するかなー」って。

(一同笑)

で、弾いたらいいんですよ(笑)。僕はそういう雰囲気だけです。で、このレスポールに戻ると、最初からこれにいかずに、下にあるプレーントップを弾いて「いいじゃん、これ」って。「買おうかなー。あ、でもこっちも弾かせて」って本命にいって、「こっち買うわ」と。
そんな買い方をしました。お金があまっているわけじゃないんですよ。でも楽器に弾かされちゃうというか、自分にとって自分の引き出しを増やすようなものなんです。
ほんとは一度に1本しか弾けないんだからそんなにいらないはずなんだけど、自分の生活が豊かになるという理由をつけては買うわけですよ。だからこそ、こんなにバラバラなギターがそろっていくんですよ。
バリトンギターだって、「よし、バリトンでしかできない曲をやろう」ということで松本孝弘さん(B'z)と春畑さんとでやった「Theater Of Strings」の「MISSION IMPOSSIBLE THEME」になるんですね。それでもう満足なんですよ。そういうイメージ。イメージをひとつひとつの楽器にあてはめていく感じです。




「DIMENSION / 『20』?NEWISH?ジャケット写真」



DIMENSION / 『20』?NEWISH?

15周年にして20枚目のを迎えた今作は、初のニューヨークレコーディングによるワールドワイド感溢れ、これまでの活動を総括するまさに金字塔アルバムです!!

【収録曲】
DISC-1
01: NEWISH
02:Black Code
03:Cut To The Cool
04:Things Never Change
05:I Will
06:Returns
07:Out Off This Sky
08:Far From Here
09:Life
10:Be My Wind
11:Jazz Cigarette(15th Anniversary version)




安藤まさひろさんからつないでいただいたバトンが、2年越しで増崎さんに手渡されました。
「イマジネーションできない未来は絶対にこない」、名言ですね。次回もどうぞお楽しみに!




●協力、写真提供:ZAIN ARTISTS/ZET
●写真、文:Yahoo!オークション






DIMENSIONオフィシャルサイト



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