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角松敏生さんインタビュー2006 Vol.2

角松敏生さん角松敏生さんインタビュー。今回はニューアルバム「Prayer」について語ります。どうぞお楽しみください!



インタビュー中の角松敏生さん



レコーディングメンバーでのライブ

(アルバム「Prayer」を)作っている最中には「これいったいどんなアルバムになるんだろう?」って感じだったんですよ。ただ、ニューヨークの(スティーヴ・)ガッドさんとのセッションのなかで、ガッドさんとベースのアンソニー・ジャクソンさんが僕の作った曲を「いい」と言ってくれた。評価してくれてノリノリでやってくれたということもあって、それが手ごたえの第1段階。
帰国してトライポッドの三人(小林信吾さん、友成好宏さん、森俊之さん)と今剛さんが、音を聴いて「カッコいい」と言ってくれたんですよ。たとえミュージシャンを指名してその人がやってくれたとしても、楽しんでやってくれて「いい曲だ。ツアーもいっしょにやりたい」というモチベーションをスタジオでどう高めていってもらうかは、僕にとってはすごく重要なことなんですね。スタジオで名うてのミュージシャンたちが一生懸命にやって作り上げたものを、次はライブで表現する。これが僕の真骨頂なんですね。


いろいろなやり方があると思いますが、僕はそれが一番正しいと思っているんですよ。本物をホンモノとして見せる。レコーディングでやったものを同じレベルで観客のみなさんに見せる、これが見せ方としての基本だと思っています。そこにこだわってきたし。それ以外はもう導かれるままにやっていったら、こういうアルバムになりました、ということなんです。

この25年間、時間がない時間がないと過ごしてきたその緊迫感で必然的に自分が積み重ねてきたものを、フルポテンシャルで吐き出したものがこの作品になったんでしょうね。自分のなかにはただ必死だったという記憶しかないんですけど、できあがってみると非常にいいものができていたので、一安心という感じなんです。




角松敏生さん記録に値する音楽

ひとつおもしろいことがあってね。ドラマーを決めたらその人にあった曲を作るっていったでしょ? それを打ち込みで作っておいて、それを当人に聴いてもらい、その人も演奏するなかでどんどん膨らませていって、だんだん生に差し替えていくという作業をするんですね。

ガッドさんという人は、あの人に限っては、あの人がたたかないと表現できないんですよ。
そこで悩んだんです。どうしよう......って。そこでスティーヴ・ガッドのたたいているループ集がCDで出ていないか探したら1枚だけあったんですよ。ガッドさんが自分の編み出したパターンをサンバとかシャッフルとか、4小節ずつ切り貼りできるように収録されているドラムループサンプリング集のCDがね。それから自分がカッコいいと思うものをペーストしていって、1曲分のパターンを作ったんです。
だからデモの段階からドラムはスティーヴ・ガッドなんですよ。それはミュージシャンを使わない人たちが自宅で貼り合わせてリズムパターンを作るのと同じ作業なんですけどね。それを僕は音楽と呼びたくはないんですが......。そのやり方で、デモを作ってそれを本人に差し替えてもらったんです(笑)。ガッドさん、それ聴いたときに、
ガッドさん:グッジョブ! これでいいじゃん(笑)。
角松さん:これあなたですよ
ガッドさん:え、そんなのあった?
角松さん:ありましたよ
ガッドさん:......うーん、あったかもしれない
って言って、それをコピーしてくれたんです。だから逆にそこまでできているのに、わざわざホンモノに差し替えに来てくれたということが、彼にはうれしかったみたいです。

今すごくお手軽に音楽が作れる時代においては、無駄なことなのかもしれないですよね、金銭的な面でいうと。でもやっぱり音楽というのは記録するに値するものを作るべきだと僕は思っているので。このあいだも言ったかもしれませんが。そういうスタンスは25周年を迎えても変えたくなかったんですよ。そこにこだわってやりたかったという思いがありましたね。




角松敏生さん■今までもアルバムを作るときは、その後のツアーのことを考えて作られていたんですね。

そうそう。「INCARNATIO」のときも、OKIさんとの出会いがあって、トンコリの魅力を知ったわけだけど、その時点ではこれを自分のポップスになんてことは全然考えていなかったんですよ。で、サウンドトラックの話がきたのでトンコリの音を実験的に使ってみたら、「これはポップスに生かせそうだな」と思ったんです。それでOKIさんにいろいろと相談してレコーディングに参加していただいたんですね。それからほかのメンバーも固めていって。
まずツアーに参加してもらえるかというスケジューリングの問題をクリアしたところで、本格的な曲作りがスタートし、レコーディング、ツアーという流れになったんです。だからレコーディングに参加した時点からツアーの準備が始まっているという、そういう流れでやってきましたね。




角松敏生さんCDをライブで再現

■ライブのお話を伺いたいのですが、角松さんにとってレコーディングしたメンバーでライブをやるのが本来の姿だと......。

100パーセントではありませんよ。でも、100パーセントに近い形でやれるように心がけています。それが普通だったはずなんですよね。
簡単にいえば、クラシックの時代から音楽を聴くということはイコール、ライブを聴きに行くことだったんですよ。みんなライブを聴きに行って、すばらしい演奏を聴くことができたら「ブラボー」と演奏者に賛辞を与えたわけですよ。で、それをなんとか記録できないだろうかという欲望が蓄音機を生み出し、それで再生するメディアを「レコード」、記録と呼んだんです。その記録に値するものを作ろうとすることが、レコードを製作することの意味だったんですね。

ところが今はコンピュータで何でもできてしまうから、疑似的音楽というかコラージュ的音楽というか、そこにある音源を切り貼りしたりとか、プログラミングしたりとかね。あるいはできないところは編集で直してしまったりとか......。そういうふうにしてできあがってくる音楽を、記録するに値するものといって果たしてよいものなのか。
「一期一会にいい演奏を収録しました」という、もともとのレコードの概念からはおよそ今の音楽はかけ離れてしまったと思うんです。それがご時世なら、それでいいんです。でも、僕はそこにこだわってやってきたので、僕の体にそれが染み付いているわけですから、その演奏家がライブでそれを再現するということは至極当たり前のことなんです。それをやり続けることはすごく大事なことだと思うし、オーディエンスもそのライブでCDに記録されている音が生演奏で再現されることの迫力、それを体感すべきなんですね。

僕も1970年代、80年代にライブを見に行って、そこでレコードと同じ世界を再現されることに「おおっ!」ていうのはありましたからね。それがあるべき姿なんじゃないかなって思うんですよ。




角松敏生さんお金がかかっている音

■私も角松さんのライブをずいぶん見に行っていますが、そのクオリティーの高さにはいつも瞠目(どうもく)させられますし。今の音楽シーンのなかではかなりぜいたく感があるなと思うんですね。

ステージを作るという面ではあまりお金はかけないんですが、人に金をかけちゃうんです。まあ、収支としては赤字のことが多いですね(笑)。商売にはならないんですよ。でも、そうしないと自分が楽しくないし、釈然としないし、盛り上がらない(笑)。これはもうやり続けるしかないなって思うんですよ。
たとえばレコーディングにおいてループ音源を使ったり、プログラミングされたものばかり制作したとしても、僕自身が楽しめない。「音楽してない」って思うから。だから、優れたミュージシャンたちが集まって時間をかけてていねいに作っていくという作業のなかで「あ、いいのがとれたね」っていう瞬間が、音楽をやっていて一番大切なんですね。それをライブで見せるというのは、そうやって経てできた作品を祝うお祭りみたいな気分もあるんですね。その喜びをオーディエンスにも伝えたい。そういう感覚だと思いますね。

今おっしゃった「ライブで見せるぜいたくさ」みたいなことっていうのは、本来CDを聴いて済む人はそれでいいと思うんですね。決して音楽を知っていなくちゃいけないというわけではないんですが、非常にゴージャスなレコーディングなんだと、洋邦のミュージシャンが時間をかけてやったもので、素人耳で聴いたら「オッケーじゃないですか」というものをさらに突き詰めてやっているわけですから、その労力とか時間とか......。すごく価値があるものなんです。
「それがスピーカーから流れているんだよ」ということをあまり分かってもらえない時代なんですね。メカニカルに作られた音楽との違いをあまり分かってもらえない。まあ一部の音楽ファンのなかには「すげえすげえ」って言ってくれる人はいると思うんですけどね。
音楽のこと詳しくなくていいから「なんかこれは違うな」って思って聴いてほしいですし、「このCDはお金がかかっているかもしれない」って感じられる耳を持ってもらいたいなと(笑)。




角松敏生さん音にこだわって聴いてもらえたら

80年代って(音に)うるさいお客さんが多くって、音楽ファンっていわれる人の数が今と全然違ったんです。それ以降、カラオケ文化の影響もあり音楽がすごく手軽なものになってきた流れがあるんですね。供給量も増えすぎちゃって、音楽の世界そのものも何がなんだか分からなくなってきちゃっていますからね。
そんななかで、いいものを見つけ出していくってことは至難の業でしょう。それなのに「耳を持ってほしい」なんてお客さんに求めるのは酷なことだとも思っているんですよ。現在も、角松敏生を好きで聴いてくださっているファンの方はそのへんをよく分かってくださっている方が多いとは思うのですが、それ以外の僕を知らない人とか、名前だけは知っているという人とか、あるいは昔はそういう部分にこだわって音楽を聴いていたけど、最近は今の音楽のありように耳が慣れてしまって一生懸命聴かなくなってしまった人もいるんですね。そういう人たちにもう一度、「この作品はすごく貴重なことになっているんだよ」ということを感じてもらいたい作品なんです。

■たしかに今回のアルバムもそうですが、角松さんの作る音楽はリズムが「生きもの」ですよね。

基本的に、信頼できるミュージシャンとのミュージシャンシップのうえで人間同士が作っているという、本来あるべき姿なだけだと思うんです。若いミュージシャンのなかにもそうやってアンサンブルで聴かせようとしている人たちもいますから、そういうCDを聴くとホッとしたりしますけどね。でも、アーティスト性のほうが突出してしまって、作っていく過程の職人的なところを聴く人は少ないんだろうな、と思ったりしますけどね。




---たしかにレコードができる前は、音楽は生演奏で聴くしかなかったんですよね。お話はまだまだ続きます。次回もどうぞお楽しみに!
●撮影・文:Yahoo!オークション
●協力:株式会社ビーンズ ●写真提供・協力:BMG JAPAN



「角松敏生 / Prayer」初回限定盤ジャケット角松敏生 / Prayer

好評発売中

【収録曲】
01.UGAM
02.Movin'
03.You made it
04.恋の落とし穴
05.Still know nothing at all
06.かなし花
07.日照雨
08.アイシテル
09.Mannequin
10.黙想
11.Prayer
12.Smile(album version)
special track of remembrance
13.初恋(2003.11.15 YOKOHAMA ARENA)

>>アルバム試聴はこちら(外部リンク)




角松敏生ツアー情報

TOSHIKI KADOMATSU Performance 2006 "Player's Prayer"

9月30日、大宮ソニックシティを皮切りに史上最大のツアーが決定! 2006年、秋...... とてつもないコンサートツアーが始まる!

角松敏生さんオフィシャルサイトヘ
BMG JAPANオフィシャルサイトヘ




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