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ジョー奥田さん Vol.4 〜完ぺきなGod Made Sound〜

ジョー奥田さん ネイチャーサウンド・アーティスト、ジョー奥田さんインタビューの4回目。今回も実に奥の深いお話。自然の音の持つパワーを心のままに受け入れることで、人はきっとやさしくなれる。そんなステキな仕事がジョーさんのお仕事です。



自然音を収録中のジョー奥田さん



ぼくはロッカーなんです

■私のお会いしたミュージシャンの方々は、一様にクオリティーで前作を超えなきゃという思いで次作にとりかかる、とおっしゃっていましたが、ジョーさんもやはりそう思われますか?

そうですね。その気持ちはよくわかりますよ。ぼくは作品を作るとき、「全力でやる」ということを心がけているんです。自分の持てる全力をかける。仕事でもなんでも全力で向かう人が好きなんです、気持ちを込めてやるという姿勢がね。自分の全力を尽くす。ちょっとした部分に引っかかったら、それを気にならなくなるまで直すんです。「どうせ気づかないよ」っていうのがイヤなんです。どんな小さなことでもそれが基本なんです。それがいつもできて、自分がやることに対しては常に全力で臨む、そういう人にぼくはなりたいと思います。

■耳が痛いですねー(笑)。

いやいや(笑)、ぼく自身そうじゃないところが出ることもあるんですよ。ステージで失敗するとかね。日本的な解釈をすれば、そりゃ失敗しないほうがいいに決まってるし、スタッフにとってもね。でも、やっちゃうんですね。尚之くんもそうなんです。でも彼は「オレは破れロッカーだから」って笑うんです。ぼく自身もロッカーなんです。この音楽は、ぼくにとって「ロック」なんです。だからそういう姿勢でいたいんですね、きっと。破天荒なロッカーでいたいんですよ。だけど、まったく正反対の自分もいるんですよ。どれが自分の本質なのかわからなくなる。でも、ミック・ジャガーにあこがれている自分がそこに確実にいるんですよ。

ぼくのやっていることをロックだと気がついてくれた人は、2〜3人いるんですよ。ロスにキーボード・プレーヤーの難波正司という人がいまして、この人は古くはアイドルワイルド・サウス、桑名正博バンドにいた人で、河村隆一の「LOVE」に編曲などで参加した経歴があるんですが、彼が「ジョーさん、これロックだね」って。「わかる?」「わかる」(笑)。もちろん、結果として人を癒やすことになっていたり、心が震えるような自然の美しさに感涙していただいたりという、その流れのなかのロックなんですよ。自分ではね(笑)。それが自分の作品をユニークなものにしているのかもしれません。ほかにやっている人を知らないしね。

日本に一人、自然の音を録音されている方がいてその方をすごく尊敬しているんですね。中田悟さんとおっしゃるんですが。その存在を知ったのは、ぼくが仕事の拠点をロスから東京にしようとした今から3年くらい前。そのころは誰もぼくのことなんか知らないわけですよね。中田さんは自然の音を録音した作品を作って、すでに確固たる地位を築いていらしたから、ぼくにとって目標でありライバルであり、いつか肩を並べるくらいになりたいといつも思っていたんです。
その中田さんが去年(2007年9月)に亡くなったんです。ずうっと会いたかったんですよ。中田さんもおそらくですが、そろそろぼくのことを知っていたんじゃないかなと思うんですけど。中田さんとぼくとでは作品を作るときのアプローチの仕方が全然違うんですね。それで、ぼくの作品をどう思っていらしたのか聞いてみたかったんです。自然の音を録音することに関しての中田さんの考えも聞きたかったですし……。ライバルなんですが戦友なんですよね。二人しかいなかったんですから、この世界では。だからがっくりきましたね……。この先、同じようなことをやる人が出てくればいいなと思っているんですけどね。
今後、自分の作品を作ることのほかに後継者を作るのかなー、それは自分がやらなければいけないことなのかなーってね。自分が死ぬまでにはそういう人に現れていてほしいと思います。

これを仕事としてちゃんと成立させて、世間的にも認知度をあげていくのが自分の仕事なのかなと思っています。で、今でこそようやく、「自然音」というと「ああ」って反応してくれるようになりましたが、7,8年前なんてひどかったですよ。それまでの仕事柄、レコード会社とはおつきあいもありましたし話もしていましたが、「自然音」って言うと「はっ!? 何それ?」でしたからね(笑)。やっとですよ。時代が変わってきましたね。

写真:自然音を収録中のジョー奥田さん




人は美しいものに触れて、感動して心が動かないと行動しない

■そういう時代もあったんですね。たしかに、それが生業(なりわい)となるか趣味で終わるかってことを、一歩踏み出すときに考えちゃうと思うんですね。ジョーさんおっしゃるように「これが天職なんだ」という背景がないと、趣味で終わってしまうような気がするんですね。これをやることで何がしたいのか、ジョーさんにはそれがあったので成立したのだと思うんです。

そうですね。きっかけはあったんです。アメリカで依頼されて自然音は録り始めたのだけど、いっぽうでは音楽制作の仕事もしていたんです。そっちのほうが多かった。自宅のスタジオで音楽のミックス作業をしていて、耳休めに自分が録ってきたハワイの波の音を聴いていたんです。ミックスって各パートのバランスをとる作業なんですが、人間のやることですから完ぺきというのはなかなかなくて、でもそれが人間が作るものの美しさだとは思うのですが、その波を音を聴いていたとき「完ぺきに美しい」と思ったんですよ。完ぺきにバランスがとれている。波があって鳥の声があって、風の音がある。もうパーフェクトに美しいんですよ。

長年、音楽の仕事をやってきてそんなものに出合ったことはないですからね。ロスにいると世界でもっとも優れたミュージシャンたちと仕事ができる、という利点があります。彼らの演奏に感動したことは何度もありますが、波の音の完ぺきさほどのものはなかったんですよ。人間が出すいろいろな音、音楽だったり、クルマの音だったり、街の音だったり。そういうものをひっくるめてマン・メイド・サウンド(Man Made Sound)っていうんですけど、それに対し自然の音はゴッド・メイド・サウンド(God Made Sound)、神が作った音っていうんです。だからこんなに違うんだ、こんなに完ぺきなんだと。ずっと音楽作品を作って人に渡すという仕事をしてきましたが、「自然の音を人に渡す仕事。これだ!」と。そう考えてからはだんだん自然音の仕事の比重が高くなっていったんです。

たとえば屋久島。徒歩で往復10数時間の距離にある場所なんて、行きたくても行けない人は大勢います。時間的制約、経済的制約、そして身体的制約でね。身体的に制約のある人が片道6時間もかけて行けない場所に行って、そこの自然の音を作品として届けることの意味。もうひとつは島が好きだってこと。島というのはひとつの小宇宙ですから、そこで起こっていることは地球上で起こっていることの凝縮なんですよね。

奄美大島はすばらしい原生林が広大に残っている一方で、激しく自然破壊された開発が行われている場所もあります。それも無意味な開発、開発のための開発が平然とまかり通っているんですね。人間の醜い業(ごう)と美しい自然が、あんな小さな場所で同時に見えちゃうんです。普通の神経を持っている人なら、行くと「本当にこれでいいのか?」って思っちゃう。だけど、怒りの言葉やメッセージでは人は動かないんですよね。直感的にわかります。そういった言葉での説得や行動では何の解決にもならない。
たとえば、ぼくが奄美に行って「開発反対!」ってプラカードを持って叫んだとしても、島民じゃないので島の人々から見れば「おまえどうせ帰っちゃうんだろ」と、「よそもんは黙ってろ」ってことになるんです。そのとおりなんです。奄美の島民の多くはなんらかのかたちで土木事業に関わっているんですね。ということは、開発は大切な生活の基盤なんです。それをよそからやってきて「やめろ!」と声高に叫んでも、「じゃあ代わりに何をやったらいいの?」ってことになるんです。
だから、自分の立ち位置はどうなんだと見極めてから行動すべきだと思ったんです。ぼくが選んだのは傍観者であること、目撃者であることでした。見るだけ。それともうひとつは、その状況のなかで残っている一番美しいものだけを切り取って、持って帰ってそれを作品にすること。それを人が聴いて感動してくれて、その人が現状を見に行って感じてくれたり、経験してくれたりすることで「これでいいのかな」と思ってくれたらそれでいいと。

人は美しいものに触れて、感動して心が動かないと行動しないんです。それに気が付きはじめると、だんだんそれが自分の使命感になってくるんですよ。自分がやらないと。自分のやっていることにいろいろな意味があるんですよ。ロックであり、環境問題に対する自分の答えであり提示であり。人のモラリティーに対する警告だったり。
ここ3年くらいは東京にいることが多く、たまにロスにも帰りますが、何十年かの間ロスから年に数回東京と大阪に来ていました。この何十年間で人の心は非常に大きく変わったと思うんです。すさんだものになっている気がするし、人に対する思いやりがあまりにも欠けている。ぼくはそこに非常に危機感を持っているんです。ぼくは人ごみがあまり好きじゃないんですよ。渋谷とか苦手でね。でも、必要に迫られ行くこともあるし、ギュウギュウ詰めの山手線に乗らなきゃいけないときもある。そんなときにね、非常に不愉快な人を目撃することあるでしょ。それをあまり感じないようにと、みな心にシャッターを下ろして行動するんですね。自分もだんだんそういうふうになってきているんです。そういう人を見るたびに、ぼくの仕事はこういう人のための仕事なんだと思うようにしている。まさにそういう人たちの心が少しずつ変わっていくことが大事なんじゃないかなーと思っているんです。

■なるほど。そういうふうに思えるような仕事ってステキですよね。NSOのCDも、そういう人たちにぜひ聴いてもらいたいですよね。

そうですね。いい音で聴いてほしいですよね。本当にいい音で音楽を聴く、という体験を多くの人にしてほしいですね。


---さあ、いかがでしたか? 自然の音は神が作った音。早朝、目覚めて最初に聴く鳥の声。それをかき消すように爆音で走り去る違法マフラーのオートバイ……。田舎暮らししないとダメなのか!? とそんなとき、ヘッドフォンでNSOを聴くと効果的ですよ。

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NSO ネイチャーサウンドオーケストラ ジャケット 自然音と音楽が織りなす究極のハーモニー 『NSO』
ピアノ:高橋全、サックス:藤井尚之、ネイチャーサウンド:ジョー奥田

【収録曲】
1.Voyage
2.Yukidoke
3.Gentle Afternoon
4.If I ...
5.In Your Arms
6.Momiji
7.Memory Of Her
8.True Dark(nature sound)
9.Eclipse
10.On The Way Home
11.Our Song
12.Where I Came From(nature sound)
13.End of Voyage



ネイチャーサウンドオーケストラオフィシャルサイト(外部リンク)



●文:Yahoo!オークション
●写真提供、協力:ジョー奥田



読者コメント(1件のコメントがあります)

いつもこのジョーさんのシリーズ、楽しみにしています。
あらためて、Vol.1から通して読ませていただきました。
ジョーさんがどういう理由で、またどういう思いで
今の活動をなさっているのかがよく理解できました。
ジョーさんの自然を愛し、地球を愛していながら、
無理なく自然体でいらっしゃるのが本当に素晴らしいと思います。
これからもご活動、陰ながら応援させていただきます。

投稿者:さなえ | 投稿日:2009年1月10日 09:24

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