ギターラボ トップ > ジョー奥田さん > ジョー奥田さん Vol.2 〜映像作品とNSO〜

ジョー奥田さん Vol.2 〜映像作品とNSO〜

ジョー奥田さん ネイチャーサウンド・アーティスト、ジョー奥田さんインタビューの2回目。今回は映像作品への取り組み方と、8月にリリースされたアルバム「NSO / ネイチャーサウンドオーケストラ」についてのお話です。音の世界の奥深さをあらためて感じましょう。



自然音を収録中のジョー奥田さんとバイノーラルマイク



CDとDVD、どっちが……

■音プラス映像の、動画についてはどうお考えですか?

世のなかに初めてビデオが登場したとき、音楽界は大きく揺れて意見が割れたんですよ。DVDが登場したときもそうでしたね。
DVDはパッと見が(CDと)同じ銀の円盤のなかに、一方は音しか収録できない、もう一方は音と同時に映像も収録できる。「CDなんかもう不要。全部こっち(DVD)にしてしまえばいいじゃん」という意見があったんです。

そのころ、ちょうど大手芸能プロダクションの社長がロサンゼルスに遊びに来られていて、いっしょに飲む機会があったんです。で、その話をしたら「ジョー、それは違う。CDは音しか入っていないからいいんだ」とおっしゃったんです。そのプロダクションはアイドルをたくさんかかえているところなんですが、彼いわく「映像をそんな何10回も見るかい?」と。……見ないな。考えてみれば、どんなに好きなアーティストの映像でも1回見たらやめ、またしばらく時間がたってから1回見てやめ。手に入れた当初は何回も見るかもしれないけど、ふつうは数回みたら飽きて見なくなりますよね。でも「CDは何回も聴く。続けて聴くこともある。毎日聴くこともある。なぜならそれは映像がないからだ。音だけだからイマジネーションのスペースを与えてくれるからだ」と。

■なるほど。

写真:自然音を収録中のジョー奥田さんとバイノーラルマイク




映像作品の肝は情報量のコントロール

その言葉が、ずうっとぼくの頭に残っていたんですよ。
その後、ぼくは映像作品を作る機会に恵まれまして「YAKUSHIMA」(2006年4月発売)というタイトルの作品を作ったんですね。個人的には映像を作ることにとても関心があったし、好きだったんです。自然をテーマに映像を撮る、さてどうしようと。
それまでいくつか自然を撮った映像作品を見てきたのですが、ぼくがとってもおもしろいと思って見た作品は、実はひとつもなかったんですね。ただ、ひとつだけいいなと思ったのは「WATARIDORI」。それ以外はまったく何も伝わってこない。表現がよくないかもしれませんが、夜中のテレビの天気予報を見ているみたい。自然の美しさ、雄大さ。見ていて湧き上がってくるだろう感動の、あの感じ。それがまったくないんですよ。ぼくが見たなかには1本もなかったんです。

「じゃあ自分はどういった作品を作ればいいのか」と考えたときに、一番考えたのは情報量のコントロールについてなんです。
多すぎないこと、ですよね。なので、ほとんど動きのない映像作品を作ることにしたんです。パンもすー……っと(身振りで)、こんなゆっくりな感じ(笑)。要するに写真に近いものなんですね。雨粒がポタッと落ちて水滴が波紋を作ることで「あ、動画だったんだ」とわかる程度にしたんです。それはものすごくいい作品になりました。自分でも大好きな作品です。

本当は、映像がないほうがもっともっとイマジネーションのスペースを作れるんですけどね。映像だけで全部説明しようとすると、非常に情報量の多いものになりますよね。今回のNSO(ネイチャーサウンドオーケストラ)のCDを聴いた方々から「CDを聴き終わったあとの感じが、まるで映画を見終わったあとのような感覚がある」と言われたんですが、それは非常にうれしい感想でした。自分としては60分間の自然が奏でるストーリーを作りたかったのでね。実は、あれに映像をつけようと思っているんです。




プラネタリウムで披露してみたい

■映像作品にするということですか?

ええ。あまり映像が出てこない映像作品にしようと思っているんです(笑)。
最初タイトルが写って曲が流れ出します。でも、真っ暗なんです。なにも出てこない。延々と真っ暗なんですが、よく見ると星がポツリと写っている。時間がたつにつれて、少しずつ星が増えてくる。しだいに満天の星になっていき、最後は夜が明けておしまい、と。そんなくらいの映像表現が、ああいう作品(「NSO」)には一番合うと思うんです。自分の見ている世界観ではね。
たとえば漆黒の闇って表現がありますよね。あれは都会の人にはなかなか味わえない状況なんですね、森に行けばありますが。その経験をしてほしいんですよね。

こんなイベントをやりたいなと思っているのがあって、それは、プラネタリウムにすごくいいサウンドシステムを入れて、プラネタリウムは非常口の行灯(あんどん)を消せるので真っ暗にできるんですね。お客様にはそこに入っていただき、「NSO」をCDよりもずっと音質のよいオリジナルのミックスを使って1時間聴いてもらうというものなんです。

■うーん。それはいいアイデアですね。

でしょ(笑)。1度やってみたいですね。
アイデアの元になったのは「ダイアログ・イン・ザ・ダーク」というイベントなんですが、「アテンド」と呼ばれるナビゲータの方がいるんですが、その方は目が見えないんです。そのアテンドに導かれて、真っ暗闇を体験するワークショップ形式の展覧会なのですが、そこでは視覚情報がなくて、視覚以外の聴覚、嗅覚、触覚などから情報を得る、という状況を体験するおもしろさと、目の見える人と見えない人の立場が逆転してしまうというおもしろさがあるんですね。すごく秀逸なアイデアだなと感心していたんです。暗闇では目は機能していないので、耳などのほかの感覚に頼るしかないんですね。そういう体験を同時にできるような、それがさっきのプラネタリウムのアイデアの基なんです。

■そのイベント、私は参加した方からうかがったことがあります。90分くらいの体験なのだそうですが、得ることはとても多いと言っていましたね。




静かな車内もいいリスニング空間

■お話のなかに出てきた「NSO」のアルバムですが、ジョーさんのお書きになった『CD「NSO」の聴き方』に書かれた条件で聴いたみたいと考えてなかなか条件が満たせず聴けなかったのですが(笑)。

CD「NSO」の聴き方

日常の忙しい時間のなかで、たったの1時間、何からも邪魔されることなく
ゆったりとすごせる時間を選んで下さい。夜の深まった時間や明け方お勧めします。

部屋の灯を落としましょう。真っ暗が良いのですが、
キャンドルや、お好みの薄い明かりがあるのも素敵かもしれません。

次にヘッドフォンを用意してください。
使い慣れた、iPodやmp3プレーヤーのヘッドフォンで大丈夫です。
さあ、あなたが一番リラックスできる場所に座りましょう。

これで準備は整いました。

CDプレーヤーのボリュームを、いつも心地良く音楽を聴く音量にセットしたら
プレーボタンを押しましょう。

そっと目を閉じて、耳を澄ましてください。

心の旅の始まりです。                    ジョー奥田


■個人的な話で恐縮なのですが、毎年南伊豆のほうに車中泊旅行に行くんです。日中は美しい内海で遊んで、地元の温泉につかってヒグラシの声を満喫して、夜、車中泊をする道の駅に戻ってからハタと気がついたんです。都内では決してお目にかかれない満天の星空。夏の暑さでほかの車もクーラーをつけたまま駐車している。絶好のリスニング条件が整ったわけです(笑)。

ええ(笑)。クルマのなかもいいですよね。

■私の車のオーディオはかなり高音質なんです。シートを倒してサンルーフから星空をながめ、かなりボリュームを大きめにして「NSO」を聴いたんですね。……それはもう、本当にすばらしい体験になりました。車のオーディオも初めてそのポテンシャルを余すところなく発揮したという感じで。
さきほど「まるで映画を見終わったような」というお話をされていましたが、まさにそれですよね。ピアノもサックスも、いわば自分の心の動きとシンクロしているかのような感覚なんですね。映像がない分イマジネーションが広がるんですが、逆に求められているような気もしたんです。都会でのせわしない日常に置き忘れた何かを思い出させるような、「鈍ってないか?」と問いかけられているような。そういうことを考えると、ジョーさんがおっしゃったようにCDというのは適度な情報量なんだなーと納得がいきますね。

聴く状況って大事なんですね。今お話された状況って、ある意味完璧なんです。
ラジカセで聴くよりもう少しいい音の出る装置で聴いていただいたほうがいいし、誰にも何にも邪魔されない状況で聴くことに意味があるんですね。都会に住んで感覚が鈍るというのは、必然なんですね。鈍っていないとやっていけないんです、都会では。そこでは本当に繊細な人は生きていけないはず。もともとみんな繊細だったんですが、鈍感にしていかないと生活が成立しなくなるんです。




人のメンタリティーを変えるには何世代もかかる

特に男性はそうなんです。男性っていうのは「sensitivity(感受性)」を捨てるように育てられてきたところがあるんです。そのいい例ですが、子どものころ「男の子なんだから泣くんじゃない!」って言われたことなかったですか?

■ありました。

あれは悲しいから泣いているのに、「そんなこと悲しむな」と親が言うわけですよ。「痛い!」「男なんだからがまんしなさい」。痛い、と敏感に感じていることを否定されるわけですよ。そういう形で男性は社会に適合していくわけですから、「男らしくあれ」ということイコール強さであったり、勇敢さであったりね。それと引き換えに、繊細さであったり感受性の強さみたいなものを、それは女性的なものだとして押し込められてしまうんですね。ぼくも含めてそうですよね。結果として、ぼくらNSOのライブに来てくださるお客様は、1回目は7割くらいが女性で、残りが男性で。4回目は百数十人集まってくださったんですが、男性は3、4人。

■少ない……。

ほとんど女性です。男性でNSOを理解してくださる人というのは、クリエイティブな感覚をある程度キープしながら生きてる人。音楽をやっている人とか。だから、男性にとってはちょっとハードルがあるんですね。
毎回、演奏を聴きながらどーっと泣く女性がいるんですよね。こないだは立ち見なのに泣いている女性がいらっしゃって。それはすごくうれしいんです。ぼくらが届けたいと思っていることを、心でドーンと受け止めてくれている。やってて一番うれしいことですよね。

ある人が言っていたのですが、女性って男性と違って子どもを産める可能性を持っているでしょう。ジェネレーションがつながるところに本能的に関わっているんですね。環境問題のこと、CO2とか海洋汚染とかって現象面なんですが、要するに汚さないようにすれば根本的に解決するのかといえばそうではなく、なぜ汚すのかという本当の原因って、実は人の心にあるんですよ。人のメンタリティーとかモラリティーの問題じゃないですか。そこが変わっていかなければ、本質的に変わらないわけで。人の心が変わっていくには、何世代もかかるわけですよ。そういう心を持たない親に育てられた子が、それを獲得するのは非常に難しいですからね。


---NSOのCDは本当にすばらしい内容です。癒やし、ヒーリングという言葉がはやりましたが、これぞ究極の癒やし系だと思います。機会があればぜひ、聴いてみてほしいと思います。高級オーディオショップに行って、ハイエンドのオーディオでかけてもらうっていうのも一度やってみようかなと思っています(笑)。次回もお楽しみに!

>>自然をテーマにしたDVDをオークションで探す
「ダイアログ・イン・ザ・ダーク」とは(外部リンク)




NSO ネイチャーサウンドオーケストラ ジャケット 自然音と音楽が織りなす究極のハーモニー 『NSO』
ピアノ:高橋全、サックス:藤井尚之、ネイチャーサウンド:ジョー奥田

【収録曲】
1.Voyage
2.Yukidoke
3.Gentle Afternoon
4.If I ...
5.In Your Arms
6.Momiji
7.Memory Of Her
8.True Dark(nature sound)
9.Eclipse
10.On The Way Home
11.Our Song
12.Where I Came From(nature sound)
13.End of Voyage



ネイチャーサウンドオーケストラオフィシャルサイト(外部リンク)



●文:Yahoo!オークション
●写真提供、協力:ジョー奥田



読者コメント(2件のコメントがあります)

プラネタリウムのイベント企画はすばらしいですね!
ぜひやって欲しいです。

夜空のもとで聴くNSOもかなりいいでしょうねぇ。
これから涼しい季節なので、夜空にNSOを持ち出して、
聴いてみたいと思いました。どこに行こうかなぁ。

投稿者:ポップンポール | 投稿日:2008年10月26日 22:17

プラネタリウムのお話、ぜひぜひ、実行していただきたいです!!
ちょこっと妄想しただけで、かなりトリップしちゃいそうです。。。
気持ちよさそう〜〜〜☆

投稿者:nagi☆ | 投稿日:2008年10月26日 11:27

登場アーティスト

キーワードで検索!

キーワード : カテゴリ指定 :    
検索オプション