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東京ローカル・ホンクインタビュー Vol.2

音に対する執念がそうさせたのか? アルバム制作に4年もかかってしまった理由をうかがいました。
メンバーは木下弦二さん(vo、g)、井上文貴さん(g、cho)、新井健太さん(b、cho)、田中邦雄さん(ds、cho)



左より:新井健太さん(b、cho)、田中邦雄さん(ds、cho)、井上文貴さん(g、cho)、木下弦二さん(vo、g)
左より:新井健太さん、田中邦雄さん、井上文貴さん、木下弦二さん

4年かかった新作

新井健太さん(以下「アラケン」):そんなにかかるとは久保田(麻琴)さんは想像しなかったよね(笑)

木下弦二さん(以下「ゲンジ」):うん、しなかったと思う。久保田さんは直感でどんどん進めていく人だから、プロデューサーとしてのキャリアも半端じゃないし、すぐに作れるはずなんですよね。このペースがよくも悪くもおれたちなんだなあ、と。

アラケン:待ってくれたよね。

ゲンジ:うん、待ってくれた。「すみません。ぼくらはできないことはできないので……、お願いします!」みたいなね(笑)。久保田さんの出会い頭の感じ、一期一会で仕事をする感覚というのは、すごくおもしろくて。ぼくらがそれに乗れているものは、そのときにしか生まれないものというのがあって、そこを久保田さんがうまく捕らえてくれるんです。半分くらいはそういうものなんですね。反対にぼくらがずうっとあたためてきたものを出そうとすると、久保田さんとぶつかってしまうんですね。久保田さんが「これ、すごくいいよ」って言っても、ぼくらは「いやちょっと違うんですけど」という感じで。「どこがダメなの?」って聞かれても、「こうなんですよ」と言ってすぐ弾けなかったりね。「ぼくらはこう思ってて」と言ってバリバリと弾ければよかったんですけど……。「どうだっけ?」みたいな。

アラケン:こんなはずじゃない、みたいなね。




木下弦二さん ゲンジ:うん。バンドを長いことやっていると、言葉じゃない部分でコミュニケーションしていることが多くなるんですね。それが見えているときはいいんですが、一度それが消えちゃうと、それを言葉で思い出すということができなくなるんです。その空気みたいなものを伝えようとすると。バンドとしてはあたりまえのようにそういうことをやっていても、あれだけの(久保田さんのようなキャリアを持った)人が来ると、ファンでもあるし、なかなかうまく伝えられなくなったんです。でも久保田さんはそういうぼくらの考えを尊重してくれたんです。ミックスもとり直しも、何度も何度も足を運んでくれたし。久保田さんのご自宅まで行って、飯をごちそうしてもらいながらやりとりしたり。それで歩み寄っていただいた、という感じですよね。

田中邦雄さん(以下「クニオ」):久保田さんが「これでどうだ!」って言ったら、ぼくらが「いや……それは、あのー……すみません」みたいな(笑)。そんな感じのやり取りでね。恐るべし、という回数だったことは間違いないですよね。

ゲンジ:「プロデューサーとしてあらゆるクレージーなやつらと仕事してきているから、おれはへこたれないよ」って言っていましたが、それを実感しましたね。そういうアーティストをまとめる力ですよね。

アラケン:無駄じゃなかったよね。長かった分、音に出ているよね。

ゲンジ:それはそう思いますね。




新井健太さん バンドは「社会の縮図」

■出来上がった音を聴いての満足度はどうでした?

アラケン:それはね、ひとりひとり各曲ごとにありますね。おれは「この曲のベースだめだなあ」って言うと、みんなが「そんなことないよ、いいよ」って言う調子でね(笑)。最終的には自分にだけわかることと、みんなにも久保田さんにもわかる、こととの落しどころに納得できた、ということだと思うのね。

クニオ:結果として、冒頭に、「聴いて、ひじょうにいい」って(インタビュアーに)言ってもらえたように、やっぱりそういうものになったんだなあと思いますね。いろんな思いがぐちゃぐちゃに交錯しながら、久保田さんのコメントにあるように「おれの仕事のなかでも最長」みたいなところはおれたちもあるんだけど。結果としてよかったなって。その4、5年のやりとりの一番いいところが落とし込まれたものでもあり、これから先に続くためのプロセスの断面であったりと、そういう意味で非常に貴重なものになりましたね。真剣になればなるほどバンド内の「対だれそれ」みたいないろんなことがひりひりするくらいあってね。昨日聴いたら「なんだこんなもん」って思ったのに、今日聴いたら「いいじゃん」みたいに客観性が失われて、自分でもわからなくなっていたからね。




田中邦雄さん ゲンジ:バンドはリアリティーを求めるんですね。そこにリアリティーがあればそれでいいし。ないならそのリアリティーを越えるようなファンタジーがあればいいと思うんです。今度の場合はそのどちらとも言い切れないけど、確実に何かがあると思うんですよ。中途半端じゃなく。それは久保田さんとの共同作業からじゃないと生まれなかったですよね。そういうこともすべて含めて、このアルバムは「重たい」と思います。

ゲンジ:ぼくらはぶつかるときはとことん、なんですね。お互いが納得いくまで話す。話さないまでもその場から逃がさない(笑)。

クニオ:生かさず殺さずみたいなね(笑)。

ゲンジ:「もう知らねえよ」ってことは絶対に許さないんです(笑)。おおげさに言うとバンドは「社会の縮図」だと思うんですよ。そのなかでどうやったら互いを生かしながら、全体で何か美しいものを作れるか、という実験をしてるみたいな気がしますね。ちょっと無理に近いような実験をやってるような気がするんです。音楽そのものは突飛なことをやっているわけではないんですけど、それを生む空気は特殊じゃないかな、と思うんですね。そういうところから生まれる音というのがあると。





プラスアルファを探している

クニオ:時代も関係あると思うんですよね。天才的なミュージシャンは20歳代でとうに亡くなっているのに、倍近い年になって「なんでまだやってるの?」みたいなね(笑)。でもそれがやっぱりこのバンドの特殊性につながっているのかなと思うんですよ。ぼくらの音楽がオーソドックスなだけに、いいときはいい、でもダメなときはダメ、みたいなね。

井上文貴さん(以下ブンちゃん):ダメなときはもう素人バンド以下。でもやっているとまだ何か先があるよね、って思わせる何かがこのバンドにはあるよね。

ゲンジ:うん、あるよね。

クニオ:ぼくくらいの年齢になると、プロでしっかりやっているか、もう辞めちゃっているか、どっちかでしょ? 仕事しながらやってるやつなんてそういないんですよ(笑)。ぼくらは割とたくさんリハーサルをする方なんですよ。ぼくは曲を作らないからしっかりプレイするだけなんだけど、何度も何度もやっていると飽きちゃうんですよね。でもそこに新しいおもしろさを見つけるといくらでもスタジオでプレイしたいし、リハーサルの回数もさらに増えていく。
だから、良く他のミュージシャンに、「君らはリハに入り過ぎだ!」みたいなことを言われるんだけど、それは練習が散漫になってる時は確かにそうなの。飽きてたり、見えなかったりする時は。そんな時のライヴは目もあてられない様な時がある。でもやりたいことが、見えている時やバンドの中に良い流れが有る時には時間がいくらあっても足りないんですよ。で、ウチラの場合、クソもミソも一緒に…良い時も悪い時も関係ないだろ!みたいにリハに入り続けるんですよね。馬鹿が揃ってるから(笑)。


井上文貴さん ゲンジ:バンドの長さも関係してくると思うんですね。長いからこその自由もあれば、不自由もあるんですね。新しいものを触発しあればいいんでしょうけど、「だいたいおまえのそういうとこが前から気に入らねぇんだよ。」みたいなね(笑)。

クニオ:ゲンジは結婚しているから違うかもしれないけど、同じバンドで10数年って、ヘタしたら自分の彼女と会うより多く会ってる計算でしょ(笑)。

■一番長いメンバーというのは誰と誰なんですか?

ゲンジ:ぼくとクニオで、最初は19歳のときだよね。今とは違うロックバンドで。

クニオ:そこから別々のバンドになったりしてね。

ゲンジ:で、最終的にまたいっしょに、となったのが22歳くらいのときだから……。「そんなに長いこと何やってんだよ」と言われることもあるので、最近はバンドの年サバよんでいます。

(一同爆笑)

クニオ:だから大ゲンカしますよ。さすがに殴り合いはしないけど。さっきブンちゃんがいったように、まだ何かあるんだろうって思いながらね。そういうことでもないと続かないですよね。

アラケン:まだその先にある何か、っていうのはまさにそのとおりで、それがあるから音楽はやめられないですよね。その楽曲がストレートに「よかった」ってことも満足を得られることになるんだろうけど、プラスアルファを探してるという感じですよね。


---久保田さんと、メンバー個々の葛藤から生まれたアルバム「東京ローカル・ホンク」。4年の歳月はだてじゃなかった!
●撮影・文/Yahoo!オークション



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